汝、我が王妃 我、汝の望み叶えよう −00
ヤスヴェ・ソルスア・カンバリアート・セフ
あの子の始めての友達だった少年
私の中では永遠に少年のまま……
無数に、そして規則的に並ぶ墓標。その下には何もない。
一定の時期が過ぎれば墓標の名は書き換えられる。此処に戦死者として墓碑が存在するのは、たった五十年。
「こんな所で何をしている、王妃」
彼等の名をこの墓碑に刻ませた指揮官は、広大な霊廟にその名を永遠に刻まれる。
「私の視界に映るこの《墓》は、全て貴方が指揮して殺した兵士達よ」
若き日の王が指揮し、そして死んだ者達。
……この王は今でも充分若い。
若過ぎて、一生自分の夫だとは思えないでしょう。
「殺したわけではない。死んだだけだ、弱いから死んだだけ」
あの男に犯された事など、早い段階でどうでも良くなった。
『母さん。あのさぁ……』
最初は絶対に愛せないと思ってたあの子。
不思議な事にどんどん可愛く思えるようになった……あの子が可愛く思えるようになった所で、あの情けない男はどうでも良くなってしまった。
「……返してくださいませんか」
「何を?」
「解らないわけではないでしょう?」
「知らんな。返すものなどない。だが、与えることならば出来る……付いて来い、王妃」
「お断りします」
「付いて来い! 王妃アレステレーゼ!」
「嫌です」
「お前が嫌と言おうが、お前を守る騎士はもういない。言うだけ無駄だ、黙って付いて来い! 我に従え、アレステレーゼ!」
拒否する私を抱きかかえ、ゼンガルセンは宮殿へと向かった。
あの日、私からあの子を奪った皇帝の元へ。
「欲しいのであろう? 皇帝の命が。お前にくれてやろう、王妃よ。我が、お前の夫である我がその望みかなえてやろう。観ていろ、サフォントがあの赤い髪と同じ色の海に沈む様を。赤き王である我が沈めてやろう」
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